ルナは、どんなときも、
あゆに枯れない愛情をくれるといった。
あゆが笑えばいい。
あゆがしたいことを実現できたらいい。
あゆが障害者だから、
ダメだと言われるのが分からない。
あゆが障害者だから、
頑張らなきゃならないって、分からない。
あゆが障害者だから、
普通に暮らせないのが、分からない。
でもね。
あゆだってルナにいろんなこと、
してあげたい。
ネクタイなおしてあげたい。
白髪抜いてあげたい。
マッサージしてあげたい。
小さなこと、毎日思う。
手を繋いで歩きたくたって、
お互いがしたいとおもったって、
できないんだ。
だけどね。
結婚したときから、付き合ったときから、
一番したかったのは、
ルナが淋しくない毎日を過ごせること。
さみしがり屋で、
きっと本当は甘えたくて、
悔しいこといっぱいあって、
埋めてこれなかったものを、
埋めてあげたかった。
あゆは自分の家族が欲しかった。
でも、結婚してから、
ルナの家族が作りたかった。
家族で泣いて笑って、淋しくない気持ちを、
ルナにあげたかった。
だから、5年間のふたりに赤ちゃんがやってこなくて、
ルナにあげたいものが、
あゆにはできないと、ほんとうにつらかった。
もう、別の人に託した方がいいと、
本気で思っていた。
やっとね。
赤ちゃんのお陰で、
あゆから、ひとつ、ルナに返せるんだよ。
ルナにね。
ちゃんと新しい気持ち、
あゆと一緒にいても感じてもらえるんだよ。
諦めなくて良かったんだよ。
あゆは障害者だから、できないことばかり。
諦めるのが得意で生きてこなければ、
なにも進まなかった。
それにルナを巻き込んでしまった。
ルナはいつも、
諦めるのは、おかしいと言っていた。
あゆばかりが、苦しくて、頑張るのはおかしいと言っていた。
だからね。
赤ちゃんのことも、ルナのことも、
あゆは、守っていかなきゃ。
それしかできないから。
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